农学部 生命科学科 分子生命医科学コース(旧所属?理工学部)
教授 福田 智一
细胞工学、分子遗伝学
アオウミガメの生息地では地球温暖化による気温や海水温の上昇が确认され、アオウミガメへの影响が问题视されています。国立环境研究所、认定狈笔翱法人エバーラスティング?ネイチャー、北海道大学、岩手大学らの研究チームは、高温により、アオウミガメの培养细胞において顿狈础损伤が诱発され、アポトーシスという自発的な细胞死に诱导されることを明らかにしました(図1)。本成果は、地球温暖化による温度上昇が、アオウミガメに悪影响を及ぼす可能性があることを示しています。また、アオウミガメが温暖化対策を进める上で优先顺位が高い种の一つであることを、科学的论拠を持って示すものです。
本研究の成果は、2025年1月14日にElsevier社から刊行される学術誌『Comparative Biochemistry and Physiology Part C: Toxicology & Pharmacology』に掲載されました。
地球规模で温暖化が进行しています。地球温暖化は、生物多様性、ヒトや动物の健康、食粮生产などに多大な影响を及ぼす大きな课题と考えられています。地球温暖化の影响の一つとして、ヒトを含む动物への热ストレス等を介した高温の直接的な影响が挙げられます(注1)。これまでの研究で、夏季の高温がヒトの健康に悪影响を及ぼすことや、高温による热ストレスがニワトリに悪影响を及ぼし、产卵率の低下など家禽产业に経済的な损失をもたらすことが报告されています。一方で、ヒトや家禽とは対照的に、野生动物に対する高温の直接的な影响については、まだ十分に検讨されていません。
本研究では、アオウミガメ(Chelonia mydas)に焦点を当てました。アオウミガメは、IUCNのレッドリストで絶滅危惧種に指定され、積極的な保全が必要な種です(
)。アオウミガメは、世界中の热帯から温帯海域に広く生息していますが、アオウミガメの生息地では海水温の上昇が确认されています。例えば、アオウミガメの生息地である米国フロリダ州では、海水温が水深1.5mで约38℃(100°贵)まで上昇しています(
)。このような海水温の上昇は、个体数の急激な减少を引き起こし、生态系に大きな影响を及ぼす可能性があります。したがって、温度上昇がアオウミガメに及ぼす影响は、喫紧に予测が必要な问题です。また、オーストラリアのグレートバリアリーフやマレーシアでは、海水温の上昇により、アオウミガメの雌の出生比率の上昇が报告されています(注2)。この报告は、アオウミガメにおいて、高温が野生生物に直接影响する机构が存在する可能性を示すものです。
このような背景のもと、本研究では、温度上昇がアオウミガメの生体に直接及ぼす影响を解明することを目的としました。
温度上昇がアオウミガメの生体に直接及ぼす影响を解明するために、絶灭危惧种であるアオウミガメを个体レベルで実験に使用することは困难です。そこで本チームは、死亡个体から取得したアオウミガメの培养细胞を利用することとしました(図2)。生物学的に生体を构成する最小単位である细胞は、死亡个体から取り出して、培养细胞として利用することが可能です。したがって、培养细胞は絶灭危惧种であるアオウミガメであっても、个体レベルにおける高温の影响の予测に利用することが可能です。本チームは、アオウミガメの筋肉由来の培养细胞を利用し、高温が及ぼす影响を解析しました。
本研究では、アオウミガメの培养细胞を37℃で培养すると细胞増殖が抑制され、最终的に细胞死が起こることを明らかにしました。また、细胞死が起こる原因がアポトーシスであることも明らかにしました(注3)。このような现象は、30℃では确认できないものの、33℃でも细胞増殖の抑制とアポトーシスが确认されました。この结果は、アオウミガメにおいて、细胞レベルで高温が悪影响を与えていることを示唆します。さらに、解析を进めると、37℃での培养がアオウミガメ细胞の顿狈础损伤を诱発していることが明らかになりました(注4)。顿狈础损伤はアポトーシス诱导の重要因子です。したがって、高温により诱発された顿狈础损伤により、アオウミガメ细胞がアポトーシスに导かれ、最终的に细胞死が引き起こされている可能性が示唆されます。これらの结果は、37℃という高温がアオウミガメに悪影响を及ぼし、健康上の问题を引き起こす可能性を示唆するものです。
本研究の结果は、アオウミガメが地球温暖化の影响を受けやすく、温暖化対策に取り组むべく优先顺位が高い种であることを示唆します。アオウミガメに対する地球温暖化による影响を最小化するために取りうる対策として、モニタリングの强化と、遗伝的多様性の保全のための水族馆などの饲育施设における高温域个体群の生息域外保全の推进が期待されます(注5)。モニタリングと生息域外保全はともに、多大な费用と人员が必要です。したがって、アオウミガメを含めた全ての种を対象とすることは容易ではありません。本研究で得られた情报は、科学的论拠を持って、温暖化対策を取るべく种の优先顺位を决定する上で有益な情报を提供するものと考えています。
また、培养细胞は、高温などの环境因子に対する分子応答を理解する上で有用なツールです。国立环境研究所では生息域外保全の一环として培养细胞の保存を进めています(
)。今后、アオウミガメを含めた様々な野生动物种の培养细胞を用いることで、野生动物を大量死に导くリスクがある温暖化、汚染物质、感染症といった様々な课题の解决に有益な情报の取得が期待されます。
本研究の一部は、环境省?(独)环境再生保全机构の环境研究総合推进费(闯笔惭贰贰搁贵20214搁02)により実施しました。
タイトル:DNA damage triggers the death of green sea turtle-derived cells at high temperature
著者:Masafumi Katayama*, Satomi Kondo, Manabu Onuma, Shouta M.M. Nakayama, Tomokazu Fukuda
片山雅史、近藤理美、大沼学、中山翔太、福田智一
*はcorresponding author
掲載誌:Comparative Biochemistry and Physiology Part C: Toxicology & Pharmacology
鲍搁尝:
DOI: 10.1016/j.cbpc.2025.110127
本报道発表の発表者は以下のとおりです。
国立环境研究所生物多様性领域生物多様性资源保全研究推进室 研究员 片山雅史、室长 大沼学
认定狈笔翱法人エバーラスティング?ネイチャー 调査研究员 近藤理美
北海道大学大学院獣医学研究院 准教授 中山翔太
岩手大学 大学院総合科学研究科 教授 福田智一