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腸内代謝物と消化管ホルモンを介した代謝調節 ―腸内マイクロバイオータ?ホルモン?脳システムの解明に向けて―

掲载日2024.12.12
最新研究

农学部 応用生物化学科
教授 宫崎雅雄
分子生体机能学

発表のポイント

  • 脳下垂体から分泌される抗利尿ホルモンとも呼ばれるバソプレシンの受容体遗伝子が欠损したマウスでは、消化管ホルモンの分泌に异常が生じることを発见しました。
  • 消化管ホルモンの分泌異常は、腸内に生息する細菌(腸内マイクロバイオータ)が産生する酪酸の濃度が正常よりも高いことが原因で生じ、結果的に骨格筋や脂肪组织で脂質の異常な蓄積を引き起こすことが分かりました。
  • 肠内マイクロバイオータが产生する代谢物(肠内代谢物)と消化管ホルモンを介した代谢调节机构の一端が明らかになったことで、今后は代谢疾患の発症机构の解明に贡献することが期待されます。
本研究で明らかになったバソプレシン受容体遗伝子欠损マウスにおける代谢异常

概要

东京大学大学院総合文化研究科の原田一贵助教(当时(现所属:国立环境研究所环境リスク?健康领域研究员))と坪井贵司教授、东京医科大学の和田英治讲师と林由起子主任教授、岩手大学の宫崎雅雄教授、理化学研究所の平井优美チームリーダー、国立环境研究所の前川文彦上级主干研究员、国立成育医疗研究センター実験薬理研究室の中村和昭室长らは、血圧や体内の水分量の调节、情动行动や社会的行动などに関わる脳下垂体から分泌されるバソプレシンを受容するバソプレシン受容体遗伝子を欠损したマウスに见られる代谢疾患の発症机构の一端を明らかにしました。
本研究では、血液成分分析、组织解析、遺伝子発現解析、ふん便中の脂質分析を行うことで、バソプレシン受容体遺伝子欠損マウスの骨格筋や脂肪组织に脂質が異常に蓄積し、消化管ホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1: GLP-1)の分泌能が低下することを明らかにしました。このGLP-1の分泌能の低下は、腸内に生息する細菌類(腸内マイクロバイオータ)が作り出す代謝物である酪酸の腸内濃度が異常に増加したことによるものでした。これらの成果は、腸内マイクロバイオータとその代謝物に着目した代謝疾患の新たな治療戦略に貢献すると期待されます。

発表内容

代谢疾患は、ホルモンを产生する内分泌臓器の障害によりホルモンの分泌に异常が起こっている状态、あるいはそのホルモンが作用する臓器の受容体や情报伝达のしくみの障害によって、ホルモンの作用に异常が起こっている状态です。代谢疾患には、糖の代谢异常によって起こる糖尿病や脂质の代谢异常によって起こる高脂血症や肥満症などがあります。
バソプレシンは脳下垂体から分泌される抗利尿ホルモンとも呼ばれるホルモンで、血圧や体内水分量の调节、情动行动や社会的行动などに関わります。バソプレシンを受容する受容体には、痴1补搁、痴1产搁、痴2搁の3种类があります。痴1补搁遗伝子欠损マウス(痴1补搁?/?マウス)、痴1产搁遗伝子欠损マウス(痴1产搁?/?マウス)、痴1补搁?痴1产搁遗伝子二重欠损マウス(痴1补搁?/??痴1产搁?/?マウス)では、それぞれ异なる糖代谢や脂质代谢异常を示しますが、これら代谢疾患の発症机构は不明でした。
研究グループはまず、糖や脂質代謝に重要な骨格筋と脂肪组织の解析を行いました。その結果、V1aR?/??V1bR?/?マウスの骨格筋や脂質を燃焼して代謝を活性化する褐色脂肪组织(注1)において、脂質の過剰な蓄積が見られました(図1A、B)。骨格筋や脂肪组织の代謝機能を調節する各種ホルモンの血中濃度を測定したところ、V1aR?/?マウス、V1bR?/?マウス、V1aR?/??V1bR?/?マウスにおいて、小腸に存在する肠内分泌尝细胞(注2)から分泌される消化管ホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1: GLP-1)の血中濃度が低下していました(図1C)。なお、このGLP-1には、代謝調節だけでなく、血糖値を下げ、食欲を抑制する作用もあります。

図1:バソプレシン受容体遺伝子欠損マウスの骨格筋および褐色脂肪组织の形態と血中GLP-1濃度
(A) 野生型およびV1aR?/??V1bR?/?マウスの骨格筋の染色像。脂質をOil Red Oにより赤く染色したところ、V1aR?/??V1bR?/?マウスでは、骨格筋に脂質が蓄積していた。(B) 野生型およびV1aR?/??V1bR?/?マウスの褐色脂肪组织の染色像。核と細胞質をHE染色により赤紫色に染色したところ、V1aR?/??V1bR?/?マウスではHE染色で染色されない脂肪滴が増加していた。(C) 各マウスにおける血中GLP-1濃度。野生型マウスではミルク投与時に血中GLP-1濃度が上昇したが(赤枠)、V1aR?/?マウス、V1bR?/?マウス、V1aR?/??V1bR?/?マウスでは、上昇しなかった。

肠内分泌尝细胞からのGLP-1分泌は、食事に含まれる栄養素や腸内マイクロバイオータが作り出す代謝物(腸内代謝物)によって調節されます。そこで、V1aR?/??V1bR?/?マウスの腸内マイクロバイオータと腸内代謝物の組成を調べたところ、短锁脂肪酸(注3)の一つである酪酸を産生する細菌(Clostridium IV)が増加し、腸内の酪酸の濃度が増加していました(図2A、B)。次に、V1aR?/??V1bR?/?マウスでみられた血中GLP-1濃度の低下と酪酸との関係を調べるため、肠内分泌尝细胞由来の培養細胞に酪酸を長期間添加して培養したところ、GLP-1の分泌能が低下しました。
以上の結果から、バソプレシン受容体遺伝子欠損マウスでは、腸内マイクロバイオータと腸内代謝物の組成が変化してGLP-1の分泌能が低下し、さらに骨格筋や褐色脂肪组织でGLP-1の作用が失われることで、脂質代謝に異常が起こると考えられました。また、バソプレシン自身もGLP-1の分泌促進作用を持つことが本研究から明らかになり、脳下垂体から分泌されるバソプレシンが腸内マイクロバイオータと肠内分泌尝细胞の機能を調節し、体内の代謝バランスを保っていると考えられます。
近年、肠内マイクロバイオータや肠内代谢物の组成の乱れは、代谢疾患のみならずさまざまな疾患の発症に関连することが示唆されています。本研究の成果は、肠内マイクロバイオータと肠内代谢物に着目したさまざまな疾患の治疗戦略に贡献することが期待されます。

図2:バソプレシン受容体遗伝子欠损マウスにおける肠内代谢物と肠内マイクロバイオータの変化
(A) 野生型およびV1aR?/??V1bR?/?マウスのふん便中(腸内)の短锁脂肪酸の構成比。V1aR?/??V1bR?/?マウスで酪酸(緑色)の比率(濃度)が増加した。(B) 野生型およびV1aR?/??V1bR?/?マウスの腸内マイクロバイオータ中の酪酸産生菌(Clostridium IV)の比率。V1aR?/??V1bR?/?マウスで酪酸産生菌が増加した。

発表者?研究者等情报

东京大学
大学院総合文化研究科
坪井 贵司 教授
原田 一贵 助教(当时(现所属:国立环境研究所环境リスク?健康领域研究员))
大须贺 佑里 博士课程

东京医科大学
病态生理学分野
林 由起子 主任教授
和田 英治 讲师

埼玉大学
大学院理工学研究科
清水 稀惠 博士课程(当时(现所属:麻布大学獣医学部 特任助手))

岩手大学
农学部応用生物化学科
宫崎 雅雄 教授
大学院连合农学研究科
上野山 怜子 博士课程

理化学研究所
环境资源科学研究センター
平井 优美 チームリーダー

国立环境研究所
环境リスク?健康领域
前川 文彦 上级主干研究员

国立成育医疗研究センター
薬剤治疗研究部 実験薬理研究室
中村 和昭 室长

论文情报

雑誌名:Molecular Metabolism
題 名:Intestinal butyric acid-mediated disruption of gut hormone secretion and lipid metabolism in vasopressin receptor-deficient mice
著者名:Kazuki Harada, Eiji Wada, Yuri Osuga, Kie Shimizu, Reiko Uenoyama, Masami Yokota Hirai, Fumihiko Maekawa, Masao Miyazaki, Yukiko K. Hayashi, Kazuaki Nakamura, Takashi Tsuboi*
DOI:

研究助成

本研究は、科研費「基盤研究B(課題番号:23H03303)」、「若手研究(課題番号:20K16118)」、「特別研究員奨励費(課題番号:16J06838および23KJ0612)」、上原記念生命科学財団研究助成金、理化学研究所 科学技術ハブプロジェクト、ロッテ財団奨励研究助成、入澤宏?彩記念若手研究奨励賞の支援により実施されました。

用语解説

  1. 褐色脂肪组织
    体内の脂肪组织のうち、褐色脂肪細胞と呼ばれる細胞から構成される组织。一般的な脂肪组织である白色脂肪组织を構成する白色脂肪細胞は、細胞内に脂質を蓄積するのに対し、褐色脂肪細胞は自身が持つ脂質を分解して熱を産生し、全身の体温維持や代謝の活性化に関与している。
  2. 肠内分泌尝细胞
    小肠の下部から大肠にかけての上皮に散在する肠内分泌细胞の一种。骋尝笔-1およびペプチド驰驰と呼ばれる消化管ホルモンを分泌する。
  3. 短锁脂肪酸
    脂质を构成する脂肪酸のうち、炭素数が6个以下の物质の総称。肠内では食物繊维を肠内マイクロバイオータが分解することで产生され、代表的なものに酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などがある。
研究内容に関するお问い合わせ

岩手大学农学部 応用生物化学科
教授 宫崎雅雄
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019-621-6154