理工学部 物理?材料理工学科 マテリアルコース
准教授 葛原大轨
有机合成化学、有机材料学
岩手大学大学院の村上英之さん(现京都大学化学研究所博士后期课程在籍)、岩渕润树さん、浅利実希さん(修士课程在籍)、京都大学山田容子教授と岩手大学理工学部葛原大轨准教授の研究グループは、12个のベンゼン环が环状缩环した化合物であるケクレンに五员环を导入することで、ボウル型构造を持つシクロアレーン诱导体を合成しました。またこの诱导体が、室温においてボウルの凹凸が入れ替わる反転挙动を示すことや、一般的なシクロアレーンでは进行しない顿颈别濒蝉-础濒诲别谤反応によって3次元构造をもつ多环芳香族炭化水素へと変换できることを见出しました。本成果により、シクロアレーン类の构造的な特徴を活用した、有机半导体材料やセンシング材料への応用が见込まれます。
複数のベンゼン環が縮環した多環芳香族炭化水素(PHA)は、ベンゼン環の縮環形式の違いによる多様な構造をとることができ、その多様性に基づく優れた電子物性を示すことから、有機半導体材料、センシング材料、生体材料などへ可能な有機機能性材料として応用研究が行われています。PHAの中で芳香環が環状に縮環した化合物はシクロアレーンと呼ばれています。ケクレンはシクロアレーンの代表的な化合物であり、ベンゼン環12個が環状に縮環した構造を持つ化合物です。このケクレンの名前はベンゼンの構造の提唱者であるケクレに由来しており”benzene of benzene”とも呼ばれています。しかし、シクロアレーン類の合成は一般的に困難であったため、その性質や物性はあまり研究されていませんでした。
本研究では、ケクレンを构成するベンゼンのうち2つを五员环に置き换えたシクロアレーン诱导体を新たに合成することに成功しました。本合成では、ビスマストリフラート摆叠颈(翱罢蹿)?闭による缩环反応を键反応として合成を达成しました。量子化学计算、核磁気共鸣法(狈惭搁)、质量分析などから、今回合成したシクロアレーン诱导体がボウル型に歪んだ构造をもつことを明らかにしました。これは平面性の高いケクレンのベンゼン环をよりサイズの小さな五员环に置き换えることで、构造に歪みが生じるためボウル型构造へと変化したと考えられます。さらに室温において、ボウルの凹凸が反転する挙动を示すことも明らかにしました。また、今回合成したシクロアレーン诱导体の反応性を検讨したところ、ケクレンでは进行しない、顿颈别濒蝉-础濒诲别谤反応が进行することを见出し、3次元构造を持つ笔贬础へと诱导することに成功しました。
本研究では、ケクレンに対して五员环を导入することで、平面性の高い化合物からボウル型构造をもつ化合物へと変换できることを明らかにしました。そして、シクロアレーン诱导体にベンゼンの六员环以外の五员环やより大きな七员环や八员环を导入することで、新たな分子构造、电子物性、反応性を示す化合物を作り出せる可能性があることを示すことができました。また、ボウル型分子は、その反転挙动を活かしたセンシング材料、诱电体材料、半导体材料などへの応用が検讨されており、新たな有机机能性材料としての可能性を明らかにしていきたいと考えています。
題目:Bowl-Shaped Kekulene Analogues: Cycloarenes with Two Five-Membered Rings
著者:Hideyuki Murakami, Hiroki Iwabuchi, Miki Asari, Hiroko Yamada, Daiki Kuzuhara
誌名:Chemistry – A European Journal
公表日:2024/5/31
DOI:
(open access)
本研究は、以下の研究事业の成果の一部として得られました。
?文部科学省科学研究费补助金?基盘研究(颁)「様々な架桥构造をもつ环状ポルフィリン多量体の合成と机能开拓」研究代表者:葛原大轨
理工学部 物理?材料理工学科
准教授 葛原大轨
019-621-6351
kuzuhara@iwate-u.ac.jp