理工学部 物理?材料理工学科 数理?物理コース
教授 松川伦明
材料科学?物性物理学
岩手大学大学院理工学専攻羽川征秀さん、新沼広大さん(修士課程在籍、指導教員:松川倫明教授)らの研究グループは、岩手大学発の低次元超伝導物質の良質試料の合成に成功し、超伝導転移温度30K及び臨界磁場45Tの高い超伝導特性を示すことを見出しました。また、Spring8での放射光による超伝導試料のリートベルト構造解析を行い、超伝導を発現する2重鎖間の距離がキャリアドープとともに短くなることを発見しました。本研究成果は、2024年3月13日に日本物理学会発行の国際的学術雑誌J. Phys. Soc. Jpn. (オンライン版)に公開されました。
1911年オランダの物理学者オンネスにより発见された金属系超伝导体は3次元的な特徴を示し、1986年べドルツとミューラにより発见された铜酸化物系超伝导体は2次元的な性质を示すことが知られています。2004年に岩手大学で発见された超伝导体は1次元の特徴を有する世界初の低次元铜酸化物超伝导体でしたが、超伝导特性に课题がありました。また、超伝导试料に関して精密な构造解析は実施されていませんでした。(岩手大学発の一次元超伝导铜酸化物については、学部生向けの「超伝导」の教科书(物理?材料テキストシリーズ、2022.7発行、小池洋二着、内田老鹤圃)に绍介されています。)
この超伝导体の特徴は、颁耻翱金属二重锁が超伝导を発现する拟一次元超伝导体であり、铜酸化物として世界初の発见であり、その超伝导机构の解明の研究が进められています。
本研究では前駆体から良質な超伝導試料を作製するために、精密に温度制御可能な3ゾーン電気炉を試料合成に使用し、超伝導化するための熱処理条件を改良する実験を繰り返しました。高磁場での超伝導特性を調査するために東北大学金属材料研究所?強磁場センターの超伝導マグネットを使用しました。さらに、CuO金属二重鎖を構成する銅と酸素の原子間距離などの詳細な構造解析を実施する必要性から、大型放射光施設(Spring 8ビームラインBL02B2)を利用しました。
岩手大学発の低次元超伝导物质の良质试料の合成に成功し、超伝导転移温度30碍及び临界磁场45罢の高い超伝导特性を示すことを见出しました。また、厂辫谤颈苍驳8での放射光による超伝导试料のリートベルト构造解析を行い、超伝导を発现する2重锁间の距离がキャリアドープとともに短くなることを発见しました。さらに、磁気抵抗の测定结果から、磁场印加により电気抵抗の迁移幅が急に広がる现象が観测され、超伝导の磁束状态が従来の超伝导体とは异なり、热力学的な相転移ではないことが示唆されました。
今回の超伝导试料は良质ではありますが多结晶なので薄膜化や単结晶化が望まれます。また、磁场を印加したときの超伝导状态(磁束混合状态)の相図(物理的状态)を明らかにします。
題目:Crystal Structures and Superconducting Properties of Metallic Double-Chain Based Cuprate Pr2Ba4Cu7O15?δ
著者:Masahide Hagawa, Michiaki Matsukawa, , Kota Niinuma, Reiya Kudo1, Yuto Mizushima, Naohisa Kawarada, Hajime Yamamoto, Kazuhiro Sano, Yoshiaki ?no, and Takahiko Sasaki
雑誌名:J. Phys. Soc. Jpn., Vol.93, No.4, Article ID: 044705
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理工学部 物理?材料理工学科 数理?物理コース
教授 松川 伦明
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