理工学部 物理?材料理工学科 数理?物理コース
教授 宫岛信也
行列解析、数値解析、数値计算
岩手大学 理工学部 物理?材料理工学科 数理?物理コース 宮島信也教授は、非負テンソルのペロンベクトルのもつ数学的性質を新たに発見し、それらを証明しました。また、証明した性質の内のいくつかを応用することで、ペロンベクトルを含む区間をコンピュータ上で求める手法を確立しました。本研究成果は、令和6年4月15日にエルゼビアが発刊する著名な国際学術誌Linear Algebra and its Applicationsより全世界へ公開されます(本研究論文は、エルゼビアが運営するページScience Directにおいて、先行公開されています)。
理工系の学部では、1年次の数学の授业で行列という値について学びます。これは実数または复素数を縦と横に并べたものです。以后、并べる実数または复素数のことを成分と呼びます。縦に并べる成分の个数と横に并べる成分の个数が同じとき、その行列は见た目が正方形のようになるので、正方行列と呼ばれます。正方行列の中でも、并べられている成分がすべて0以上の実数であるとき、その行列は非负行列と呼ばれます。非负行列はペロン根と呼ばれるスカラーとペロンベクトルと呼ばれるベクトルをもっています。これらの値は非负行列の特性を理解するのに重要な役割を果たしますが、与えられた非负行列から简単に求められるものではありません。
表题に书かれているテンソルとは、行列を拡张したものです。行列は縦、横の2方向に成分を并べたものですが、テンソルは2以上の方向に成分を并べたものです。例えば、行列は2次テンソルですし、縦、横に加えて上に成分を并べたものは3次テンソルです。4次以上のテンソルについては、図形的な解釈は困难ですが、数式により表すことはできます。テンソルでも、并べられている成分がすべて0以上の実数であるとき、そのテンソルは非负テンソルと呼ばれます。行列の场合と同様に、非负テンソルはペロン根と呼ばれるスカラーとペロンベクトルと呼ばれるベクトルをもっています。非负テンソルのペロン根とペロンベクトルには数多くの応用があります。例えば、ページランク、グラフ理论、マルコフ连锁では、非负テンソルのペロン根とペロンベクトルが求められます。しかし、行列の场合と同様に、これらの値は与えられた非负テンソルから简単に求められるものではありません。
宫岛教授の过去の论文において、非负テンソルのペロンベクトルの一部はある多重线形方程式(复数のテンソルとベクトルとの积の和で构成される方程式。多项式方程式のベクトル版)の解であることが発见されました。しかし、例えば以下については未解明のままでした。
本研究では、1.~3.の回答として、次の数学的性质を証明しました。
(1.の回答)逆は成り立つ。すなわち、その多重线形方程式の解を基に非负テンソルのペロンベクトルを构成できる。さらに、具体的な构成方法も分かる。
(2.の回答)最高次の係数テンソルは惭-テンソルと呼ばれる构造をもっている。この构造は多重线形方程式を解きやすくする性质をもつ。
(3.の回答)一部の成分の値を大きくしたテンソルのペロンベクトルの各成分は、対応する元の非负テンソルのペロンベクトルの各成分よりも小さい。
1.と3.の回答については、テンソルどころか行列においても知られていなかったことです。加えて、これらの数学的性質以外の新たな性質も発見し、それらの証明を与えました。さらに、証明した性質の内のいくつかを応用することで、ペロンベクトルを含む区間をコンピュータ上で求める手法を確立しました。これらの成果はエルゼビアが発刊する著名な国際学術誌Linear Algebra and its Applicationsに掲載されました。
題目: Some properties concerning Perron vectors of weakly irreducible nonnegative tensors, and their application to rigorous enclosure
著者: Shinya Miyajima
誌名: Linear Algebra and its Applications
公表日: 15 April 2024
本研究は、以下の研究事业の成果の一部として得られました。
?文部科学省科学研究费补助金?基盘研究(颁)「非整数阶微分方程式系の解に対する精度保証付き数値计算法の研究」研究代表者:宫岛信也