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核融合炉ブランケットの主成分である鉄の磁性に及ぼす高密度キャビティ形成の影响を解明

掲载日2024.01.13
最新研究

理工学部 物理?材料理工学科 マテリアルコース
教授 鎌田康寛
材料工学

概要

岩手大学理工学部 鎌田康寛教授らの研究グループは、核融合炉環境を想定した鉄薄膜のイオン照射実験と第一原理計算を実施し、過酷照射が鉄の磁性に及ぼす影響を解明しました。超高真空蒸着法により高品位な純鉄薄膜を作製してヘリウムイオンの過酷照射を行いました。照射前後の構造と磁性を詳しく調べた結果、高密度の微小キャビティの形成に対して鉄の磁性が頑強であることを初めて明らかにしました。本成果は、過酷照射環境下で使用される核融合炉ブランケットの磁性の理解と電磁力の予測で役立ち、今後の核融合炉の開発に貢献できると期待されます。

背景

地上に“太阳”と同じ仕组みのエネルギー源を作ろうとする、“国际核融合実験炉滨罢贰搁”の建设が南仏で进んでいます。ウランの核分裂を用いる原子力発电と异なり、水素の核融合を用いる核融合発电は、①燃料の枯渇、②高レベル放射性廃弃物の発生、③运転时の暴走、の心配がない点で优れていますが、1亿度以上の高温プラズマの闭じ込めが必要な点で技术的ハードルは高くなっています。また、材料工学的な観点からは、原子力発电に比べて桁违いに多い中性子照射による激しい材料损伤が悬念され、力学特性に与える过酷照射の影响の研究が进んでいます。他方、定常运転时?紧急时に核融合炉ブランケットに加わると予想される电磁力の计算で磁気特性値の入力が必要で、过酷照射を受けた际の磁性の把握が不可欠ですが、実験の难しさから研究はほとんど行われていませんでした。

研究内容

本研究は、中性子照射(原子炉とホットラボ使用が不可欠で、莫大なコストと数年の照射期间が必要)の模拟実験として高品位薄膜试料のイオン照射(実験の自由度が高く、加速照射が可能)を実施し、磁性の挙动を调べた点に特徴があります。超高真空蒸着法でブランケット材の贵82贬钢の主成分である纯鉄の高品位薄膜を作製して、室温でヘリウムイオンの过酷照射を行い、キャビティ(核融合炉照射环境下で生じるヘリウムの集合体)の形成が构造と磁性に与える影响を実験的に详しく调べ、第一原理计算の结果とあわせて考察しました。

研究成果

断面透过电子顕微镜(罢贰惭)観察から高密度キャビティの形成を确认し、さらに齿线回折実験から膜面垂直方向に格子が膨张していることを确认しました。一般に鉄は格子膨张を起こすと、磁気体积効果により饱和磁化が増加すると予想されますが、今回、大きな増加は确认されませんでした。この実験结果は第一原理计算の结果とも一致しました。本研究より纯鉄の磁性が高密度キャビティの形成に対して顽强であることを初めて明らかにしました。

今后の展开

本研究ではヘリウムイオンの室温照射が纯鉄の磁性に及ぼす影响を解明しました。今后は同様の手法を用いてクロム添加合金の高温照射(运転时のブランケット予想温度は300℃?550℃)などの実験を进め、ブランケット材の磁性に及ぼす过酷照射の详细を明らかにし、材料工学的な観点から核融合炉开発に贡献したいと考えています。

掲载论文

題目:Microstructure and Magnetism of Heavily Helium-Ion Irradiated Epitaxial Iron Films
著者:Y. Kamada, D. Umeyama, T. Oyake, T. Murakami, K. Shimizu, S. Fujisaki, N. Yoshimoto, K. Ohsawa and H. Watanabe
誌名:Metals 2023, 13(11), 1905;
公表日:2023年11月18日

用语解説

  • 滨罢贰搁(イーター)
    7极(日?米?欧?露?中?韩?印)の国际协力で南フランスに建设中の核融合実験炉。
  • ブランケット
    核融合炉心プラズマの周りに设置する构造体。核融合反応で発生した中性子のエネルギーを热として取り出す役割のほか、中性子の遮蔽と燃料(叁重水素)の生产を行う。
  • 贵82贬钢
    核融合炉ブランケット用に日本が开発した材料。主成分の鉄にクロムとタングステンを少量加えた特殊な合金で、高温强度と低放射化特性の点で优れている。

本研究は、以下の研究事业の成果の一部として得られました。
?文部科学省科学研究费补助金?基盘研究(叠)23贬01890「照射形成キャビティと阶层构造を含む鉄基合金の电磁特性の高効率?动的可视化研究」研究代表者:鎌田康寛
?九州大学応用力学研究所共同利用研究 核融合力学分野「ヘリウムイオン照射した鉄系合金のキャビティ形成と磁気特性」研究代表者:鎌田康寛

本件に関するお问い合わせ

岩手大学 理工学部 物理?材料理工学科 マテリアルコース
教授 鎌田康寛
019-621-6431
kamada@iwate-u.ac.jp